嬉野温泉
所在地  佐賀県嬉野市
長崎道嬉野I.C.南東2km塩田川河岸一帯
最終訪問日  2014/10/18
共同湯のシーボルトの湯 日本三大美人の湯のひとつ。
 嬉野温泉の開湯の伝説は古く、神宮皇后の征西の頃まで遡る。単純に記紀の年代をそのまま西暦に当てはめる事はできないが、伝説上は西暦200年頃の話ということになり、古さのほどが解るだろうか。その内容は、河原で傷付いた白鶴が傷を癒しているのを征西の帰路に見た皇后が、兵士を川に入れてみたところ、温泉が湧いていてたちどころに傷が癒えた為、「あなうれしの」と言ったことから、名が付いたという。これについては、「あなうれしや」だったという説もある。史料としては、和銅6年(713)に詔が出され、天平4年(732)から同12年(740)の間に編纂されたとみられている肥前風土記にその名が見え、正に有史以来という言葉が当てはまる温泉と言えるだろう。
 以降も、戦国時代には兵士の療養に使われたことが窺えるほか、江戸時代には一般化して藩が運営する共同浴場が存在しており、温泉場として非常に有名であった。また、オランダに来た外国人も温泉に立ち寄ったことが史料などで残っており、有名なシーボルトもそのひとりという。オランダ商館付きだったシーボルトは、文政9年(1826)2月に商館長の江戸参府に随行した際に立ち寄っており、紀行として当時の様子を記している。
 温泉の泉質は、無色透明で硫黄臭も少ない素直な湯だが、所謂重層泉であるナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉で、浴感としてはややぬめりが有った。これは重曹泉の特徴で、角質化した皮膚を乳化して洗い流し、滑らかにする効果がある。また、嬉野温泉は源泉が17もある為、正確に言えば温泉郷なのだが、源泉によって湧出温度に差があるものの、概ね50℃以上、高い源泉では85℃から95℃と、非常に高い。ちなみに、嬉野名物として知られる、とろける湯豆腐は、この温泉水のphが高い為だという。
 自分が立ち寄ったのは、共同場であるシーボルトの湯で、その名は前述のように立ち寄ったシーボルトから来ているのだが、建物自体は新しい。この前身にあたる古湯温泉は、元を辿れば藩が運営していた公衆浴場で、大正11年に火事で焼失し、同13年にドイツ人が設計した洋館風の建物となったが、平成8年に残念ながら老朽化で閉鎖された。しかし、再建を望む市民の声もあった為、平成22年4月に洋館風の外観を完全復元して開館したものという。建物内部は、エントランスが吹き抜けになっていて開放感があるほか、建物の2階から川筋の景色が楽しめ、出前が可能な休憩室も用意されており、建物全体の雰囲気が非常に良い。浴室内部は非常にシンプルで、2つの浴槽が並ぶだけだったが、別に貸切湯は4つも備えているらしく、懐古調の外観ながら現代的でもある。浴室の設備的にはやや物足りないが、洋館風の窓の雰囲気が良く、美人の湯ということもあってのんびりと湯を愉しむ事が出来る温泉だった。